私たちが扇平にこだわる理由

  軽井沢特有の湿地生態系
〜夏の間は朝4時ごろ起きて、今の72ゴルフ場になっている辺りに馬の餌にする草を刈りに行った。馬の荷鞍に一抱えもある草を片側3わ、全部で6わ刈ってきた。朝露が付いていてとても重かった。毎朝だった。時には草の中にマツムシソウが混じっていて、それが(草の束から)つんと突き出しているのが、馬の背で揺れていた。〜
(Yさんの話から『もう一度見たい!軽井沢の草原・湿原』p.42)

写真:2006.07.30(軽井沢町発地)

※軽井沢(扇平)の湿地を守る会が、国土地理院「全国湿地面積調査」のデータから作成。

表1. 全国有数の湿地だった軽井沢  山岳・高原湿地面積 (除・北海道)  単位:ha
順位  県名    市町村名 明治・大正時代の面積  現在の面積   変化量  変化率(%)
 1  群馬    片品村      502,22   818,23    316,01    62,92
 2  岩手    玉山村      375,63    21,47   ▼354,16   ▼94,28
 3  栃木    日光市      292,42   187,44   ▼104,99   ▼35,90
 4  岩手    松尾村      210,40   121,51   ▼88,89   ▼42,25
 5  福島   会津若松市      196,39    53,23   ▼143,17   ▼72,90
 6  秋田    田沢湖町      167,61   116,72   ▼50,90   ▼30,37
 7  長野    戸隠村      165,04    9,69   ▼155,35   ▼94,13

 8

 長野

  軽井沢町

    150,27

  3,64

 ▼146,63

  ▼97,58

 軽井沢はちょっと前までは草原と湿原の町でした。この50年間ですっかり変わってしまいましたが、特に軽井沢の南地域には日本でも有数の湿地が広がっていました。明治・大正時代の軽井沢は、全国でも上位10位以内に入る湿地の町だったのです(表1.参照)。
(順位は多少上下し得る)

 現在の湿地の減少率ではなんと97.58%も失われてしまっています。他市町村の多くが何らかの対策(保全地域の指定、自然公園としての整備など)を取っているのに対し、軽井沢町ではまだ何の対策も取られていないのです。

 今、軽井沢南の扇平地区で、2万坪の別荘団地建設計画が持ち上がっています。ここは全体の3〜4割がヤチと呼ばれる湿地であり、住宅や別荘に不適な土地ですが、一方で自然生態系の豊かな土地でもあります。この湿地には日本全国でも2県(岩手・長野)にしか生息が確認されていないハナヒョウタンボクの幼木が多数あることが分かりました。
 この土地は、かつて南軽井沢に広がっていた草原・湿原の生き残りです。今では軽井沢町でもめったに見ることのできない、数多くの絶滅危惧種の植物がひっそりと咲いています。住宅や別荘に不適な湿地であったため、今まで開発されずに自然が残ってきたのです。
 私たちは開発を全否定するつもりはありません。しかしこうした経緯のある土地を、残り少ない湿地や希少植物を消滅させてまで、別荘として開発する必要があるのでしょうか?

それなのに!!